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【マーケティング基礎講座】②マーケティング戦略の流れ

こんにちは。「マーケティングパパのぴろ吉」です!

このシリーズでは、全7回にわたって「マーケティング基礎講座」をお届けします。

・実践で使える知識だけを最短で習得したい方

・自分でビジネスをされている方 ・これから起業したいと思っている方

・実際の成果につなげてステップアップしたい方

そんな皆さんに、ぜひ読んでいただきたい内容になっています。

目次

第1章:なぜ環境分析から始めるのか?

感覚だけで戦う時代は終わった

マーケティング戦略の第一歩として、必ず押さえておきたいのが「環境分析」です。なぜなら、どんなに素晴らしい商品やサービスであっても、それが市場や社会のニーズとズレていたら、決して売れることはないからです。

ビジネスとは、常に「環境の中で戦っている」もの。つまり、外部の要因──競合の動向、顧客の価値観、法律の変化、テクノロジーの進化──に大きな影響を受けているのです。しかも、その多くは自社の努力では変えられない「外的要因」です。

成功する経営者は“風”を読む

たとえば、いくら味に自信があるレストランを開いても、人通りがない立地ではお客様は来てくれません。逆に、少し味にムラがあったとしても、話題のエリアや流行のジャンルに乗っていれば、自然と集客できることもあります。つまり、「外部環境を読む力」がある人ほど、ビジネスチャンスをつかむのがうまいのです。

実際、うまくいっている経営者の多くは「時代の空気」を読むのが得意です。ニュースやSNS、法改正、テクノロジーの動向にアンテナを張り、「そろそろこの業界に変化が起きそうだ」と肌で察知して行動しています。

なぜ多くの人は“やみくも”に動くのか?

では、なぜ多くの人が「やみくもな施策」に走ってしまうのでしょうか? その理由のひとつが、「環境分析の重要性を知らないから」です。

なんとなくSNSを始めてみたり、誰かにすすめられた集客法を真似してみたり。でも、戦略の前提となる“市場の状況”を読み取らずに動き出すと、方向性が定まらないままリソースだけを消耗してしまいます。

あなた自身にも、こんな経験はありませんか? 「よさそうだと思って始めたけど、全然成果につながらなかった」 「競合がやってるから真似してみたけど、差別化できなかった」

このような事態を避けるために必要なのが、「環境分析」なのです。

戦略に“地図とコンパス”を持とう

環境分析を行うことで、あなたのビジネスが「どんなフィールドにいて」「これからどんな風が吹いてくるのか」を把握できます。それはまさに、“戦略に地図とコンパスを持つこと”に等しいのです。

感覚や思いつきではなく、冷静に環境を観察し、論理的に戦略を組み立てる。 その第一歩が、「市場環境の読み解き」なのです。

では、実際にどのような視点で環境を分析すればよいのでしょうか?

その答えが、次章で紹介する「マクロ環境分析」と「ミクロ環境分析」という2つの視点です。

第2章:環境分析の全体像と2つの視点

外部環境を読み解く2つのアプローチ

環境分析には、大きく分けて2つの視点があります。

1つ目は「マクロ環境分析」。これは、社会全体の動きやトレンド、テクノロジーの進化など、“自分ではコントロールできない外部要因”を読み解くものです。

たとえば、少子高齢化、物価上昇、生成AIの台頭など、社会や技術の大きな流れは、業種を問わずビジネスに影響を与えます。

2つ目は「ミクロ環境分析」。こちらは、自社が属する“業界内”の構造や競争状態を読み解き、自社がどのような立場にいるのかを分析するものです。

競合はどのくらいいるのか?代替品の脅威は?顧客や取引先はどれほどの影響力を持っているのか?──これらを冷静に分析することで、「勝てるポジション」が見えてきます。

マクロとミクロ、それぞれの特徴と目的

マクロ環境分析の目的は、「大きな流れを読むこと」です。社会や技術、政治、経済の変化は、じわじわと業界や生活に影響を及ぼします。早期にその兆しを察知できれば、次の一手を打つ余裕が生まれます。

一方、ミクロ環境分析は「業界の構造を可視化する」ことが目的です。同じ市場でも、構造的に利益が出やすい業界とそうでない業界があります。その“儲かりやすさ”を構造で把握することで、ビジネスの前提がはっきりします。

フレームワークで分析の質を高める

この2つの分析を効率よく行うために、マーケティングの現場では定番のフレームワークが用いられます。

  • マクロ環境分析 → 【PEST分析】
  • ミクロ環境分析 → 【5 Forces分析】(ファイブフォース分析)

どちらも「思いつき」ではなく、論理的に環境を整理し、戦略を立てるうえで非常に有効なツールです。

PEST分析では、外部環境を「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」の4つの視点で整理します。

5 Forces分析では、「競合の強さ」や「新規参入のしやすさ」など、業界構造を5つの要因で分析します。

外部分析は“戦略の土台”になる

これらの分析は、単なる情報整理ではなく、戦略の“土台”になります。

現場でよくあるのが、「なんとなく世の中が変わっている気がするけど、どう読み取ればいいか分からない」という悩みです。そこでPEST分析を使えば、情報を4領域に分けて整理でき、「どの変化が自社に影響するか」が見えてきます。

同様に、「競合が多くてしんどい」「価格競争が激しい」と感じたとき、5 Forces分析で業界構造を見直すと、「そもそもこの市場は儲かりにくいのでは?」という仮説が立ちます。

つまり、これらの分析を通じて、“感覚的な不安”が“戦略的な判断材料”へと変わっていくのです。

第3章:PEST分析とは?社会の変化を4つの視点で読み解く

そもそもPEST分析とは?

PEST分析とは、社会全体に影響を与える4つの外部要因──Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)──の頭文字を取ったものです。

これはマクロ環境分析の代表的なフレームワークであり、「自分では変えられないけれど、自分のビジネスに大きな影響を及ぼすもの」を体系的に整理するために用いられます。

何かひとつのトレンドや出来事に飛びつくのではなく、4つの軸でバランスよく“社会全体の流れ”を読み解くことで、偏りのない環境認識が可能になります。

各要素の意味と注目ポイント

それでは、各要素の意味と見るべきポイントを簡単に整理してみましょう。

  • Politics(政治):法改正、規制緩和、補助金、税制、外交政策など
  • Economy(経済):金利、為替、物価、景気、雇用、消費動向など
  • Society(社会):人口動態、ライフスタイル、価値観、教育、文化、働き方など
  • Technology(技術):AI、IoT、ロボティクス、通信インフラ、代替技術など

たとえば「電子帳簿保存法の改正」「最低賃金の引き上げ」「脱炭素の流れ」など、ビジネスにインパクトを与える変化の多くは、これらの4分類に整理できます。

具体例:カフェビジネスにおけるPEST分析

たとえば、カフェビジネスを始めると仮定して、PEST分析をしてみましょう。

  • Politics:プラスチックストローの廃止指導、飲食店への衛生管理義務
  • Economy:原材料費の高騰、電気料金の上昇、最低賃金の引き上げ
  • Society:Z世代のカフェ利用増加、SNS映え重視の消費行動
  • Technology:モバイルオーダー・キャッシュレス対応の進展

このように、PEST分析を行うことで「どの社会変化が自社に影響を及ぼしそうか」「将来どこにリスクやチャンスがあるか」を可視化できます。

PEST分析の注意点と使い方

PEST分析を行う際のポイントは、「ただ情報を並べるだけで終わらせないこと」です。

重要なのは、それぞれの変化が「自社にとってどう影響するのか?」を言語化すること。つまり、単なる社会の事実をまとめるのではなく、“戦略に活かせる洞察”に昇華させることが目的です。

分析の際には次のような問いを意識すると良いでしょう。

  • この変化は、わが社のどの事業に影響しそうか?
  • どんな業界が追い風/逆風を受けそうか?
  • 5年後を見据えた場合、今から備えておくべき変化は何か?

PEST分析を継続的に行うことで、「なんとなく世の中が変わっている気がする…」という曖昧な感覚が、「確信をもって戦略を語れる状態」へと変わっていきます。

第4章:5 Forces分析とは?業界の“構造”を見抜く視点

業界には“儲かりやすさ”がある

ビジネスの成功は、商品力や営業力だけで決まるわけではありません。どんなに努力しても、「そもそも儲かりにくい構造」の業界に参入してしまえば、利益を上げ続けるのは困難です。

たとえば、コンビニ業界は価格競争が激しく、薄利多売が基本の構造です。一方で、ソフトウェア業界は一度開発した製品をスケールさせやすく、利益率が高い傾向があります。

このように、業界の構造自体が“戦いやすさ”を決定づけるのです。

では、自分が参入しようとしている市場が「儲かりやすい構造」なのか? あるいは「今いる業界で、どこに勝ち目があるのか?」を判断するにはどうすればよいのでしょうか?

そのための視点が、5 Forces分析です。

5 Forces分析とは?

5 Forces分析(ファイブフォース分析)は、経営学者マイケル・ポーターが提唱した業界構造の分析フレームワークです。

業界の“競争の厳しさ”は、次の5つの力(フォース)によって決まるとされています:

  1. 業界内の競合企業の脅威
  2. 新規参入者の脅威
  3. 代替品・代替サービスの脅威
  4. 売り手(仕入先)の交渉力
  5. 買い手(顧客)の交渉力

この5つの視点から業界を分析することで、「この業界で利益を出すのはどれほど難しいか?」を客観的に判断できるようになります。

各フォースの具体的な意味

以下、それぞれのフォースについて解説します:

  • 競合他社の脅威:競合の数が多く、差別化が難しいと価格競争が激化し、利益率が下がります。
  • 新規参入の脅威:参入障壁(初期投資、ブランド力、規制など)が低ければ、新しい競合が次々と現れやすくなります。
  • 代替品の脅威:代替できる商品・サービスが多いほど、顧客が離れやすくなります(例:炭酸水が清涼飲料の代替に)。
  • 仕入先の交渉力:特定の仕入先に依存している場合、価格や納期の交渉で不利になる可能性があります。
  • 顧客の交渉力:顧客が少数で影響力が強い場合、価格や条件を強く要求されやすくなります。

カフェビジネスを例にした5 Forces分析

たとえば、カフェビジネスで5 Forces分析を行うと以下のようになります:

  • 競合の脅威:周囲に多数のカフェが存在し、差別化が困難。
  • 新規参入の脅威:初期費用が比較的少なく参入しやすい業界。
  • 代替品の脅威:コンビニコーヒー、缶コーヒー、自宅のコーヒーメーカーなど代替が豊富。
  • 仕入先の交渉力:珈琲豆の仕入先が限られている場合、価格交渉力が弱くなる。
  • 顧客の交渉力:立地や雰囲気で選ばれるケースが多く、選択肢が多いため顧客側が強い。

このように分析することで、「自社がどこで勝負すべきか」「何を強みにするか」のヒントが得られます。

5 Forces分析をどう活用するか

5 Forces分析を行うことで、次のような問いに答えられるようになります:

  • この業界は参入すべきか?
  • 今のポジションで勝てる要素はあるか?
  • 差別化するなら、どこに注力すべきか?

また、すでにビジネスを展開している人であっても、「改めて自分の業界構造を見直す」ことで、思い込みや無意識の前提から解放され、より有利な戦略を立てられるようになります。

第5章:SWOT分析とは?自社の立ち位置を客観的に把握する

SWOT分析の基本構造

SWOT分析とは、外部環境と内部環境を掛け合わせて、自社の戦略立案に役立てるフレームワークです。

分析の枠組みは以下の4象限に分かれています:

  • Strength(強み):自社の優位性、競合に勝る要素
  • Weakness(弱み):自社の課題、リソースの不足
  • Opportunity(機会):外部環境の変化による追い風要因
  • Threat(脅威):外部環境の変化による逆風要因

この4つの視点から「現時点の自社の立ち位置」を可視化し、今後どんな戦略をとるべきかを検討するためのツールです。

外部環境 × 内部環境の交差点を見極める

SWOT分析は、PEST分析と5 Forces分析で得られた外部環境の知見と、自社の強み・弱み(たとえばバリューチェーン分析やVRIO分析など)を組み合わせて行います。

具体的には次のような手順になります:

  1. PEST分析・5 Forces分析で「O(機会)」「T(脅威)」を洗い出す
  2. 自社のバリューチェーンや実績、資産から「S(強み)」「W(弱み)」を整理する
  3. 4象限に当てはめ、関係性を見ながら戦略を検討する

この時、「ただの箇条書き」に留まるのではなく、「クロスSWOT」と呼ばれる次のような掛け合わせで考えることで、戦略の精度が格段に上がります。

クロスSWOT:戦略への落とし込み

SWOT分析をしたあとは、次のようなマトリクスで戦略を導き出します:

  • S×O(強み×機会):強みを活かしてチャンスをつかむ戦略(攻め)
  • W×O(弱み×機会):弱みを克服して機会を活かす戦略(改善)
  • S×T(強み×脅威):強みを活かしてリスクを回避する戦略(守り)
  • W×T(弱み×脅威):最も脆弱な領域。撤退・外部支援・注力しない等の判断(回避)

たとえば、カフェビジネスで考えると:

  • S×O:SNS映えする内装(強み)を活かし、Z世代のカフェ需要(機会)に応える
  • W×O:低い認知度(弱み)を改善し、地域イベントへの参加で新規顧客を獲得
  • S×T:店舗立地の良さ(強み)を使って、価格競争(脅威)に対抗する
  • W×T:人手不足かつ高い人件費(弱み×脅威)→セルフオーダー化を検討

このようにクロスSWOTは、「分析で終わらせない」ための視点です。実際のアクションに結びつけることで、戦略が現場に根付きます。

SWOT分析を使うと何が変わるのか?

多くの中小企業では、経験と勘に頼った施策が多く見られます。しかし、SWOT分析を定期的に行うことで、次のような効果が期待できます:

  • 直感ではなく、論理的な戦略立案ができるようになる
  • チーム内で「現状の認識」を共有できる
  • 事業や市場が変化しても、柔軟に方針を修正できる

つまり、SWOT分析とは「今の自分たちの立ち位置を正しく認識し、前に進むための羅針盤」と言えるのです。

第6章:STP分析とは?ターゲットとポジショニングで戦略を明確にする

STP分析の基本構造

STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の頭文字を取ったフレームワークで、マーケティング戦略の中核となる考え方です。

簡単に言うと、「誰に向けて、どんな価値を、どういう立ち位置で提供するか?」を明確にするためのステップです。

このフレームワークは、あらゆる商品・サービスにおいて「市場をどう切り取って、どこで戦うか?」という意思決定の軸となります。

Segmentation:市場を分ける

最初のステップは「Segmentation(セグメンテーション)」です。これは、市場全体をいくつかのグループに分ける作業を意味します。

分け方には様々な切り口があります:

  • デモグラフィック:年齢、性別、職業、家族構成など
  • ジオグラフィック:地域、気候、都市規模など
  • サイコグラフィック:価値観、ライフスタイル、興味関心など
  • ビヘイビアル:購買頻度、利用目的、価格感度など

たとえば、「コーヒー好きな20代女性」「テレワーク中のサラリーマン」など、それぞれ異なるニーズや行動パターンを持ったグループに分けることができます。

この段階では、「どんなお客様グループが存在するか?」を幅広く整理します。

Targeting:狙いを定める

セグメンテーションの次は、「Targeting(ターゲティング)」です。

このステップでは、分けた市場の中から「自社が最も価値を提供できる相手=狙うべきターゲット」を選定します。

選ぶ際の判断基準として、以下のような観点が重要です:

  • 市場の規模や成長性があるか?
  • 自社のリソースで対応可能か?
  • 競合が少なく、勝てる見込みがあるか?

たとえば、カフェを経営する場合、「Z世代のSNSヘビーユーザー層」に絞ることで、メニューや内装、プロモーションの方向性を明確にできます。

Positioning:頭の中にどう残るか?

最後のステップが「Positioning(ポジショニング)」です。

これは、「選んだターゲットの頭の中で、自社の商品をどう位置づけるか?」を決める工程です。

たとえば、同じカフェでも:

  • 「本格派のコーヒーで勝負する店」
  • 「おしゃれな空間で写真が撮れるSNS映えカフェ」
  • 「子ども連れでも安心のカフェ」

といった具合に、どんな“印象”や“役割”で記憶されるかが重要になります。

ポジショニングを決めるには、「誰と競合していて、何で差別化するか?」を明確にする必要があります。

この際、よく使われるのが「ポジショニングマップ」です。2つの軸(例:価格×本格度など)を取り、自社と競合の位置関係を視覚化することで、自社の立ち位置を客観的に把握できます。

STP分析の重要性

STP分析は、「すべての人に向けた商品では誰にも刺さらない」という事実を前提にしています。

ターゲットを絞り、ポジショニングを明確にすることで:

  • メッセージが届きやすくなる
  • 商品・サービスの設計がぶれなくなる
  • マーケティング施策の費用対効果が高まる

つまりSTP分析とは、限られたリソースで最大の効果を出すための“戦う場所の選び方”なのです。

第7章:4P分析とは?顧客に届く仕組みを設計する

4P分析の基本構造

4P分析とは、マーケティング戦略を「実行レベル」で具体化するためのフレームワークであり、次の4つの要素で構成されています:

  • Product(製品)
  • Price(価格)
  • Place(流通)
  • Promotion(販促)

この4つのPは「マーケティングミックス」と呼ばれ、「誰に・何を・どう届けるか?」を具体的な施策に落とし込むための指針となります。

Product:顧客が本当に欲しい“価値”をつくる

商品開発の段階では、「どんな商品を作るか?」よりも、「誰にとって、どんな価値がある商品なのか?」という視点が重要です。

たとえば、コーヒーを売る場合でも、「苦味と香りが豊かな豆を使用」といったスペックの説明ではなく、「忙しい朝に、ひと息つける時間を提供する」といったベネフィット(顧客価値)を意識する必要があります。

商品設計の際には「商品3層モデル」(中核価値・実体・付随機能)を使って考えると効果的です。

  • 中核価値:お客様が本当に求めている便益(例:癒やし)
  • 実体:商品そのもの(例:カフェラテ)
  • 付随機能:保証・パッケージ・雰囲気など(例:おしゃれな空間)

Price:価値に見合った価格設定を考える

価格は、顧客にとって「価値のバロメーター」です。

安ければ売れるとは限りません。高価格でも、「それだけの価値がある」と認識されれば売れるのです。むしろ、安すぎると「品質が不安」と思われるリスクもあります。

価格戦略では、以下のような観点が重要です:

  • コストベース(原価+利益)
  • 競合ベース(市場価格と比較)
  • バリューベース(顧客が感じる価値)

たとえば、同じ500円のコーヒーでも、「インスタ映えする」「店員がフレンドリー」「限定メニュー」といった付加価値があれば、顧客は満足感を持って購入します。

Place:商品を“適切なルート”で届ける

Placeとは「流通チャネル」を意味し、「商品がどこで・どのように買えるか?」を設計する要素です。

大きく分けると以下のような流通モデルがあります:

  • 直接販売(例:自社EC、実店舗、イベント)
  • 間接販売(例:代理店、卸、量販店)

また、商流の「長さ」(中間業者の数)によって、利益構造や顧客接点の持ち方も変わります。

オンライン販売が主流になりつつある今、D2C(Direct to Consumer)モデルで「ブランドと顧客が直接つながる」ことが重要になっています。

「どこで売るか」だけでなく、「どんな体験を通じて買ってもらうか?」まで設計できると、マーケティングの完成度が一段と上がります。

Promotion:届けたい相手に“届く伝え方”を設計する

最後のPはプロモーション、つまり「販促活動」です。

ここでは「広告」だけでなく、広報、イベント、SNS、紹介キャンペーン、体験会など、あらゆる接点が対象になります。

重要なのは、「どんなメッセージを、誰に、どのタイミングで、どの手段で伝えるか?」という設計力です。

たとえば、SNS映えを狙うZ世代向けであれば、InstagramやTikTokでの発信が効果的。30代ビジネスパーソン向けであれば、メルマガやYouTubeの方が反応率が高いかもしれません。

伝え方を考えるときには「AISASモデル」などの消費者行動モデルを活用するのも一手です。

  • Attention(注目)
  • Interest(興味)
  • Search(検索)
  • Action(購入)
  • Share(共有)

顧客がどの段階にいるかを想定し、それぞれに合わせた伝え方を設計することが大切です。

4P分析は“売れる仕組み”の設計図

4P分析は、STPで定めた「誰に・何を・どう届けるか?」を、実際に行動に移すための設計図です。

中小企業や個人事業でも、この視点を持っていれば「やるべきこと」「やらなくていいこと」が明確になり、限られたリソースでも効果的な施策を打つことができます。

第8章:カスタマージャーニーとは?“体験の流れ”で設計するマーケティング

カスタマージャーニーの全体像

カスタマージャーニーとは、「顧客が商品やサービスと出会ってから、購入・利用・継続・紹介に至るまでの一連の体験プロセス」を地図のように描き出す手法です。

マーケティングの現場では、この体験の流れを見える化することで:

  • 顧客がどこで悩んでいるか
  • どこで離脱しているか
  • どんな感情で動いているか

といった情報を把握し、改善のヒントを得ることができます。

カスタマージャーニーを設計することで、「断片的な施策」ではなく「一貫した体験」を提供することができるようになります。

ジャーニーは“フェーズごとの感情の流れ”

顧客は、次のような流れで商品・サービスと接点を持ちます:

  1. 認知フェーズ:存在を知る
  2. 興味・関心フェーズ:興味を持つ
  3. 比較・検討フェーズ:他社と比べる
  4. 購入・契約フェーズ:決断する
  5. 利用・体験フェーズ:使ってみる
  6. 継続・紹介フェーズ:ファンになる

この一連の流れを、表や図にして視覚化したものが「カスタマージャーニーマップ」です。

実務での作成手順

カスタマージャーニーマップを作成する際の手順は以下の通りです:

  1. ペルソナを設定する(理想の顧客像を明確に)
  2. 顧客の行動ステップを分解する(認知→検討→購入など)
  3. 各ステップでの感情・課題・接点を洗い出す
  4. 改善ポイントや課題を可視化する

たとえば、「30代子育てママ向けのベビーマット」であれば:

  • 認知:SNSで他のママが紹介している投稿を見る
  • 興味:公式サイトで可愛いデザインをチェック
  • 検討:Amazonのレビューと比較
  • 購入:InstagramのリンクからECサイトで購入
  • 体験:開封して写真を撮り、SNSでシェア

このように、顧客の“リアルな体験”を描くことで、どのタイミングでどんな施策が必要かが見えてきます。

カスタマージャーニーを使う意義

なぜ今、カスタマージャーニーが重要なのか?それは「顧客との接点が増えすぎたから」です。

テレビCMだけでモノが売れる時代ではなくなり、SNS、検索、レビュー、LINE、動画など、顧客は複数のチャネルをまたいで意思決定を行います。

そのため、1つの媒体やキャンペーンだけで完結させようとしても限界があります。

ジャーニーを描いておけば:

  • 「どの接点を優先すべきか?」がわかる
  • 顧客の感情の変化に寄り添った施策が設計できる
  • 社内での共通認識がとれる

つまり、カスタマージャーニーは「顧客理解の解像度を高め、組織としてマーケティングを成功させる道具」なのです。

まとめ

ここまでで、マーケティング戦略に欠かせないフレームワークを見てきました。

どれも大事な視点ですが、いきなり全部を完璧にこなそうとする必要はありません。

以下のように、大まかな流れを覚えておくだけでも十分役立ちます:

  1. 外の環境を読む(PEST・5 Forces)
  2. 自社の強みを知る(VRIO・バリューチェーン)
  3. 戦略を立てる(SWOT・クロスSWOT)
  4. 誰に何を届けるかを決める(STP)
  5. どうやって届けるかを設計する(4P)
  6. 体験の流れで最適化する(カスタマージャーニー)

この順番に沿って考えていくと、マーケティング戦略はぐっと整理されていきます。

これらのフレームワークを、自分のビジネスやサービスに少しずつ当てはめながら、実践してみてください。

「知ってる」だけで終わらせず、「使える知識」にしていくことが何より大切です。

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