こんにちは。「マーケティングパパのぴろ吉」です!
このシリーズでは、全7回にわたって「マーケティング基礎講座」をお届けします。
・実践で使える知識だけを最短で習得したい方
・自分でビジネスをされている方 ・これから起業したいと思っている方
・実際の成果につなげてステップアップしたい方
そんな皆さんに、ぜひ読んでいただきたい内容になっています。
第1章:なぜ環境分析から始めるのか?
感覚だけで戦う時代は終わった
マーケティング戦略の第一歩として、必ず押さえておきたいのが「環境分析」です。なぜなら、どんなに素晴らしい商品やサービスであっても、それが市場や社会のニーズとズレていたら、決して売れることはないからです。
ビジネスとは、常に「環境の中で戦っている」もの。つまり、外部の要因──競合の動向、顧客の価値観、法律の変化、テクノロジーの進化──に大きな影響を受けているのです。しかも、その多くは自社の努力では変えられない「外的要因」です。
成功する経営者は“風”を読む
たとえば、いくら味に自信があるレストランを開いても、人通りがない立地ではお客様は来てくれません。逆に、少し味にムラがあったとしても、話題のエリアや流行のジャンルに乗っていれば、自然と集客できることもあります。つまり、「外部環境を読む力」がある人ほど、ビジネスチャンスをつかむのがうまいのです。
実際、うまくいっている経営者の多くは「時代の空気」を読むのが得意です。ニュースやSNS、法改正、テクノロジーの動向にアンテナを張り、「そろそろこの業界に変化が起きそうだ」と肌で察知して行動しています。
なぜ多くの人は“やみくも”に動くのか?
では、なぜ多くの人が「やみくもな施策」に走ってしまうのでしょうか? その理由のひとつが、「環境分析の重要性を知らないから」です。
なんとなくSNSを始めてみたり、誰かにすすめられた集客法を真似してみたり。でも、戦略の前提となる“市場の状況”を読み取らずに動き出すと、方向性が定まらないままリソースだけを消耗してしまいます。
あなた自身にも、こんな経験はありませんか? 「よさそうだと思って始めたけど、全然成果につながらなかった」 「競合がやってるから真似してみたけど、差別化できなかった」
このような事態を避けるために必要なのが、「環境分析」なのです。
戦略に“地図とコンパス”を持とう
環境分析を行うことで、あなたのビジネスが「どんなフィールドにいて」「これからどんな風が吹いてくるのか」を把握できます。それはまさに、“戦略に地図とコンパスを持つこと”に等しいのです。
感覚や思いつきではなく、冷静に環境を観察し、論理的に戦略を組み立てる。 その第一歩が、「市場環境の読み解き」なのです。
では、実際にどのような視点で環境を分析すればよいのでしょうか?
その答えが、次章で紹介する「マクロ環境分析」と「ミクロ環境分析」という2つの視点です。
第2章:環境分析の全体像と2つの視点
外部環境を読み解く2つのアプローチ
環境分析には、大きく分けて2つの視点があります。
1つ目は「マクロ環境分析」。これは、社会全体の動きやトレンド、テクノロジーの進化など、“自分ではコントロールできない外部要因”を読み解くものです。
たとえば、少子高齢化、物価上昇、生成AIの台頭など、社会や技術の大きな流れは、業種を問わずビジネスに影響を与えます。
2つ目は「ミクロ環境分析」。こちらは、自社が属する“業界内”の構造や競争状態を読み解き、自社がどのような立場にいるのかを分析するものです。
競合はどのくらいいるのか?代替品の脅威は?顧客や取引先はどれほどの影響力を持っているのか?──これらを冷静に分析することで、「勝てるポジション」が見えてきます。
マクロとミクロ、それぞれの特徴と目的
マクロ環境分析の目的は、「大きな流れを読むこと」です。社会や技術、政治、経済の変化は、じわじわと業界や生活に影響を及ぼします。早期にその兆しを察知できれば、次の一手を打つ余裕が生まれます。
一方、ミクロ環境分析は「業界の構造を可視化する」ことが目的です。同じ市場でも、構造的に利益が出やすい業界とそうでない業界があります。その“儲かりやすさ”を構造で把握することで、ビジネスの前提がはっきりします。
フレームワークで分析の質を高める
この2つの分析を効率よく行うために、マーケティングの現場では定番のフレームワークが用いられます。
- マクロ環境分析 → 【PEST分析】
- ミクロ環境分析 → 【5 Forces分析】(ファイブフォース分析)
どちらも「思いつき」ではなく、論理的に環境を整理し、戦略を立てるうえで非常に有効なツールです。
PEST分析では、外部環境を「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」の4つの視点で整理します。
5 Forces分析では、「競合の強さ」や「新規参入のしやすさ」など、業界構造を5つの要因で分析します。
外部分析は“戦略の土台”になる
これらの分析は、単なる情報整理ではなく、戦略の“土台”になります。
現場でよくあるのが、「なんとなく世の中が変わっている気がするけど、どう読み取ればいいか分からない」という悩みです。そこでPEST分析を使えば、情報を4領域に分けて整理でき、「どの変化が自社に影響するか」が見えてきます。
同様に、「競合が多くてしんどい」「価格競争が激しい」と感じたとき、5 Forces分析で業界構造を見直すと、「そもそもこの市場は儲かりにくいのでは?」という仮説が立ちます。
つまり、これらの分析を通じて、“感覚的な不安”が“戦略的な判断材料”へと変わっていくのです。
第3章:PEST分析とは?社会の変化を4つの視点で読み解く
そもそもPEST分析とは?
PEST分析とは、社会全体に影響を与える4つの外部要因──Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)──の頭文字を取ったものです。
これはマクロ環境分析の代表的なフレームワークであり、「自分では変えられないけれど、自分のビジネスに大きな影響を及ぼすもの」を体系的に整理するために用いられます。
何かひとつのトレンドや出来事に飛びつくのではなく、4つの軸でバランスよく“社会全体の流れ”を読み解くことで、偏りのない環境認識が可能になります。
各要素の意味と注目ポイント
それでは、各要素の意味と見るべきポイントを簡単に整理してみましょう。
- Politics(政治):法改正、規制緩和、補助金、税制、外交政策など
- Economy(経済):金利、為替、物価、景気、雇用、消費動向など
- Society(社会):人口動態、ライフスタイル、価値観、教育、文化、働き方など
- Technology(技術):AI、IoT、ロボティクス、通信インフラ、代替技術など
たとえば「電子帳簿保存法の改正」「最低賃金の引き上げ」「脱炭素の流れ」など、ビジネスにインパクトを与える変化の多くは、これらの4分類に整理できます。
具体例:カフェビジネスにおけるPEST分析
たとえば、カフェビジネスを始めると仮定して、PEST分析をしてみましょう。
- Politics:プラスチックストローの廃止指導、飲食店への衛生管理義務
- Economy:原材料費の高騰、電気料金の上昇、最低賃金の引き上げ
- Society:Z世代のカフェ利用増加、SNS映え重視の消費行動
- Technology:モバイルオーダー・キャッシュレス対応の進展
このように、PEST分析を行うことで「どの社会変化が自社に影響を及ぼしそうか」「将来どこにリスクやチャンスがあるか」を可視化できます。
PEST分析の注意点と使い方
PEST分析を行う際のポイントは、「ただ情報を並べるだけで終わらせないこと」です。
重要なのは、それぞれの変化が「自社にとってどう影響するのか?」を言語化すること。つまり、単なる社会の事実をまとめるのではなく、“戦略に活かせる洞察”に昇華させることが目的です。
分析の際には次のような問いを意識すると良いでしょう。
- この変化は、わが社のどの事業に影響しそうか?
- どんな業界が追い風/逆風を受けそうか?
- 5年後を見据えた場合、今から備えておくべき変化は何か?
PEST分析を継続的に行うことで、「なんとなく世の中が変わっている気がする…」という曖昧な感覚が、「確信をもって戦略を語れる状態」へと変わっていきます。
第4章:5 Forces分析とは?業界の“構造”を見抜く視点
業界には“儲かりやすさ”がある
ビジネスの成功は、商品力や営業力だけで決まるわけではありません。どんなに努力しても、「そもそも儲かりにくい構造」の業界に参入してしまえば、利益を上げ続けるのは困難です。
たとえば、コンビニ業界は価格競争が激しく、薄利多売が基本の構造です。一方で、ソフトウェア業界は一度開発した製品をスケールさせやすく、利益率が高い傾向があります。
このように、業界の構造自体が“戦いやすさ”を決定づけるのです。
では、自分が参入しようとしている市場が「儲かりやすい構造」なのか? あるいは「今いる業界で、どこに勝ち目があるのか?」を判断するにはどうすればよいのでしょうか?
そのための視点が、5 Forces分析です。
5 Forces分析とは?
5 Forces分析(ファイブフォース分析)は、経営学者マイケル・ポーターが提唱した業界構造の分析フレームワークです。
業界の“競争の厳しさ”は、次の5つの力(フォース)によって決まるとされています:
- 業界内の競合企業の脅威
- 新規参入者の脅威
- 代替品・代替サービスの脅威
- 売り手(仕入先)の交渉力
- 買い手(顧客)の交渉力
この5つの視点から業界を分析することで、「この業界で利益を出すのはどれほど難しいか?」を客観的に判断できるようになります。
各フォースの具体的な意味
以下、それぞれのフォースについて解説します:
- 競合他社の脅威:競合の数が多く、差別化が難しいと価格競争が激化し、利益率が下がります。
- 新規参入の脅威:参入障壁(初期投資、ブランド力、規制など)が低ければ、新しい競合が次々と現れやすくなります。
- 代替品の脅威:代替できる商品・サービスが多いほど、顧客が離れやすくなります(例:炭酸水が清涼飲料の代替に)。
- 仕入先の交渉力:特定の仕入先に依存している場合、価格や納期の交渉で不利になる可能性があります。
- 顧客の交渉力:顧客が少数で影響力が強い場合、価格や条件を強く要求されやすくなります。
カフェビジネスを例にした5 Forces分析
たとえば、カフェビジネスで5 Forces分析を行うと以下のようになります:
- 競合の脅威:周囲に多数のカフェが存在し、差別化が困難。
- 新規参入の脅威:初期費用が比較的少なく参入しやすい業界。
- 代替品の脅威:コンビニコーヒー、缶コーヒー、自宅のコーヒーメーカーなど代替が豊富。
- 仕入先の交渉力:珈琲豆の仕入先が限られている場合、価格交渉力が弱くなる。
- 顧客の交渉力:立地や雰囲気で選ばれるケースが多く、選択肢が多いため顧客側が強い。
このように分析することで、「自社がどこで勝負すべきか」「何を強みにするか」のヒントが得られます。
5 Forces分析をどう活用するか
5 Forces分析を行うことで、次のような問いに答えられるようになります:
- この業界は参入すべきか?
- 今のポジションで勝てる要素はあるか?
- 差別化するなら、どこに注力すべきか?
また、すでにビジネスを展開している人であっても、「改めて自分の業界構造を見直す」ことで、思い込みや無意識の前提から解放され、より有利な戦略を立てられるようになります。
第5章:SWOT分析とは?自社の立ち位置を客観的に把握する
SWOT分析の基本構造
SWOT分析とは、外部環境と内部環境を掛け合わせて、自社の戦略立案に役立てるフレームワークです。
分析の枠組みは以下の4象限に分かれています:
- Strength(強み):自社の優位性、競合に勝る要素
- Weakness(弱み):自社の課題、リソースの不足
- Opportunity(機会):外部環境の変化による追い風要因
- Threat(脅威):外部環境の変化による逆風要因
この4つの視点から「現時点の自社の立ち位置」を可視化し、今後どんな戦略をとるべきかを検討するためのツールです。
外部環境 × 内部環境の交差点を見極める
SWOT分析は、PEST分析と5 Forces分析で得られた外部環境の知見と、自社の強み・弱み(たとえばバリューチェーン分析やVRIO分析など)を組み合わせて行います。
具体的には次のような手順になります:
- PEST分析・5 Forces分析で「O(機会)」「T(脅威)」を洗い出す
- 自社のバリューチェーンや実績、資産から「S(強み)」「W(弱み)」を整理する
- 4象限に当てはめ、関係性を見ながら戦略を検討する
この時、「ただの箇条書き」に留まるのではなく、「クロスSWOT」と呼ばれる次のような掛け合わせで考えることで、戦略の精度が格段に上がります。
クロスSWOT:戦略への落とし込み
SWOT分析をしたあとは、次のようなマトリクスで戦略を導き出します:
- S×O(強み×機会):強みを活かしてチャンスをつかむ戦略(攻め)
- W×O(弱み×機会):弱みを克服して機会を活かす戦略(改善)
- S×T(強み×脅威):強みを活かしてリスクを回避する戦略(守り)
- W×T(弱み×脅威):最も脆弱な領域。撤退・外部支援・注力しない等の判断(回避)
たとえば、カフェビジネスで考えると:
- S×O:SNS映えする内装(強み)を活かし、Z世代のカフェ需要(機会)に応える
- W×O:低い認知度(弱み)を改善し、地域イベントへの参加で新規顧客を獲得
- S×T:店舗立地の良さ(強み)を使って、価格競争(脅威)に対抗する
- W×T:人手不足かつ高い人件費(弱み×脅威)→セルフオーダー化を検討
このようにクロスSWOTは、「分析で終わらせない」ための視点です。実際のアクションに結びつけることで、戦略が現場に根付きます。
SWOT分析を使うと何が変わるのか?
多くの中小企業では、経験と勘に頼った施策が多く見られます。しかし、SWOT分析を定期的に行うことで、次のような効果が期待できます:
- 直感ではなく、論理的な戦略立案ができるようになる
- チーム内で「現状の認識」を共有できる
- 事業や市場が変化しても、柔軟に方針を修正できる
つまり、SWOT分析とは「今の自分たちの立ち位置を正しく認識し、前に進むための羅針盤」と言えるのです。
第6章:STP分析とは?ターゲットとポジショニングで戦略を明確にする
STP分析の基本構造
STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の頭文字を取ったフレームワークで、マーケティング戦略の中核となる考え方です。
簡単に言うと、「誰に向けて、どんな価値を、どういう立ち位置で提供するか?」を明確にするためのステップです。
このフレームワークは、あらゆる商品・サービスにおいて「市場をどう切り取って、どこで戦うか?」という意思決定の軸となります。
Segmentation:市場を分ける
最初のステップは「Segmentation(セグメンテーション)」です。これは、市場全体をいくつかのグループに分ける作業を意味します。
分け方には様々な切り口があります:
- デモグラフィック:年齢、性別、職業、家族構成など
- ジオグラフィック:地域、気候、都市規模など
- サイコグラフィック:価値観、ライフスタイル、興味関心など
- ビヘイビアル:購買頻度、利用目的、価格感度など
たとえば、「コーヒー好きな20代女性」「テレワーク中のサラリーマン」など、それぞれ異なるニーズや行動パターンを持ったグループに分けることができます。
この段階では、「どんなお客様グループが存在するか?」を幅広く整理します。
Targeting:狙いを定める
セグメンテーションの次は、「Targeting(ターゲティング)」です。
このステップでは、分けた市場の中から「自社が最も価値を提供できる相手=狙うべきターゲット」を選定します。
選ぶ際の判断基準として、以下のような観点が重要です:
- 市場の規模や成長性があるか?
- 自社のリソースで対応可能か?
- 競合が少なく、勝てる見込みがあるか?
たとえば、カフェを経営する場合、「Z世代のSNSヘビーユーザー層」に絞ることで、メニューや内装、プロモーションの方向性を明確にできます。
Positioning:頭の中にどう残るか?
最後のステップが「Positioning(ポジショニング)」です。
これは、「選んだターゲットの頭の中で、自社の商品をどう位置づけるか?」を決める工程です。
たとえば、同じカフェでも:
- 「本格派のコーヒーで勝負する店」
- 「おしゃれな空間で写真が撮れるSNS映えカフェ」
- 「子ども連れでも安心のカフェ」
といった具合に、どんな“印象”や“役割”で記憶されるかが重要になります。
ポジショニングを決めるには、「誰と競合していて、何で差別化するか?」を明確にする必要があります。
この際、よく使われるのが「ポジショニングマップ」です。2つの軸(例:価格×本格度など)を取り、自社と競合の位置関係を視覚化することで、自社の立ち位置を客観的に把握できます。
STP分析の重要性
STP分析は、「すべての人に向けた商品では誰にも刺さらない」という事実を前提にしています。
ターゲットを絞り、ポジショニングを明確にすることで:
- メッセージが届きやすくなる
- 商品・サービスの設計がぶれなくなる
- マーケティング施策の費用対効果が高まる
つまりSTP分析とは、限られたリソースで最大の効果を出すための“戦う場所の選び方”なのです。
第7章:4P分析とは?顧客に届く仕組みを設計する
4P分析の基本構造
4P分析とは、マーケティング戦略を「実行レベル」で具体化するためのフレームワークであり、次の4つの要素で構成されています:
- Product(製品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(販促)
この4つのPは「マーケティングミックス」と呼ばれ、「誰に・何を・どう届けるか?」を具体的な施策に落とし込むための指針となります。
Product:顧客が本当に欲しい“価値”をつくる
商品開発の段階では、「どんな商品を作るか?」よりも、「誰にとって、どんな価値がある商品なのか?」という視点が重要です。
たとえば、コーヒーを売る場合でも、「苦味と香りが豊かな豆を使用」といったスペックの説明ではなく、「忙しい朝に、ひと息つける時間を提供する」といったベネフィット(顧客価値)を意識する必要があります。
商品設計の際には「商品3層モデル」(中核価値・実体・付随機能)を使って考えると効果的です。
- 中核価値:お客様が本当に求めている便益(例:癒やし)
- 実体:商品そのもの(例:カフェラテ)
- 付随機能:保証・パッケージ・雰囲気など(例:おしゃれな空間)
Price:価値に見合った価格設定を考える
価格は、顧客にとって「価値のバロメーター」です。
安ければ売れるとは限りません。高価格でも、「それだけの価値がある」と認識されれば売れるのです。むしろ、安すぎると「品質が不安」と思われるリスクもあります。
価格戦略では、以下のような観点が重要です:
- コストベース(原価+利益)
- 競合ベース(市場価格と比較)
- バリューベース(顧客が感じる価値)
たとえば、同じ500円のコーヒーでも、「インスタ映えする」「店員がフレンドリー」「限定メニュー」といった付加価値があれば、顧客は満足感を持って購入します。
Place:商品を“適切なルート”で届ける
Placeとは「流通チャネル」を意味し、「商品がどこで・どのように買えるか?」を設計する要素です。
大きく分けると以下のような流通モデルがあります:
- 直接販売(例:自社EC、実店舗、イベント)
- 間接販売(例:代理店、卸、量販店)
また、商流の「長さ」(中間業者の数)によって、利益構造や顧客接点の持ち方も変わります。
オンライン販売が主流になりつつある今、D2C(Direct to Consumer)モデルで「ブランドと顧客が直接つながる」ことが重要になっています。
「どこで売るか」だけでなく、「どんな体験を通じて買ってもらうか?」まで設計できると、マーケティングの完成度が一段と上がります。
Promotion:届けたい相手に“届く伝え方”を設計する
最後のPはプロモーション、つまり「販促活動」です。
ここでは「広告」だけでなく、広報、イベント、SNS、紹介キャンペーン、体験会など、あらゆる接点が対象になります。
重要なのは、「どんなメッセージを、誰に、どのタイミングで、どの手段で伝えるか?」という設計力です。
たとえば、SNS映えを狙うZ世代向けであれば、InstagramやTikTokでの発信が効果的。30代ビジネスパーソン向けであれば、メルマガやYouTubeの方が反応率が高いかもしれません。
伝え方を考えるときには「AISASモデル」などの消費者行動モデルを活用するのも一手です。
- Attention(注目)
- Interest(興味)
- Search(検索)
- Action(購入)
- Share(共有)
顧客がどの段階にいるかを想定し、それぞれに合わせた伝え方を設計することが大切です。
4P分析は“売れる仕組み”の設計図
4P分析は、STPで定めた「誰に・何を・どう届けるか?」を、実際に行動に移すための設計図です。
中小企業や個人事業でも、この視点を持っていれば「やるべきこと」「やらなくていいこと」が明確になり、限られたリソースでも効果的な施策を打つことができます。
第8章:カスタマージャーニーとは?“体験の流れ”で設計するマーケティング
カスタマージャーニーの全体像
カスタマージャーニーとは、「顧客が商品やサービスと出会ってから、購入・利用・継続・紹介に至るまでの一連の体験プロセス」を地図のように描き出す手法です。
マーケティングの現場では、この体験の流れを見える化することで:
- 顧客がどこで悩んでいるか
- どこで離脱しているか
- どんな感情で動いているか
といった情報を把握し、改善のヒントを得ることができます。
カスタマージャーニーを設計することで、「断片的な施策」ではなく「一貫した体験」を提供することができるようになります。
ジャーニーは“フェーズごとの感情の流れ”
顧客は、次のような流れで商品・サービスと接点を持ちます:
- 認知フェーズ:存在を知る
- 興味・関心フェーズ:興味を持つ
- 比較・検討フェーズ:他社と比べる
- 購入・契約フェーズ:決断する
- 利用・体験フェーズ:使ってみる
- 継続・紹介フェーズ:ファンになる
この一連の流れを、表や図にして視覚化したものが「カスタマージャーニーマップ」です。
実務での作成手順
カスタマージャーニーマップを作成する際の手順は以下の通りです:
- ペルソナを設定する(理想の顧客像を明確に)
- 顧客の行動ステップを分解する(認知→検討→購入など)
- 各ステップでの感情・課題・接点を洗い出す
- 改善ポイントや課題を可視化する
たとえば、「30代子育てママ向けのベビーマット」であれば:
- 認知:SNSで他のママが紹介している投稿を見る
- 興味:公式サイトで可愛いデザインをチェック
- 検討:Amazonのレビューと比較
- 購入:InstagramのリンクからECサイトで購入
- 体験:開封して写真を撮り、SNSでシェア
このように、顧客の“リアルな体験”を描くことで、どのタイミングでどんな施策が必要かが見えてきます。
カスタマージャーニーを使う意義
なぜ今、カスタマージャーニーが重要なのか?それは「顧客との接点が増えすぎたから」です。
テレビCMだけでモノが売れる時代ではなくなり、SNS、検索、レビュー、LINE、動画など、顧客は複数のチャネルをまたいで意思決定を行います。
そのため、1つの媒体やキャンペーンだけで完結させようとしても限界があります。
ジャーニーを描いておけば:
- 「どの接点を優先すべきか?」がわかる
- 顧客の感情の変化に寄り添った施策が設計できる
- 社内での共通認識がとれる
つまり、カスタマージャーニーは「顧客理解の解像度を高め、組織としてマーケティングを成功させる道具」なのです。
まとめ
ここまでで、マーケティング戦略に欠かせないフレームワークを見てきました。
どれも大事な視点ですが、いきなり全部を完璧にこなそうとする必要はありません。
以下のように、大まかな流れを覚えておくだけでも十分役立ちます:
- 外の環境を読む(PEST・5 Forces)
- 自社の強みを知る(VRIO・バリューチェーン)
- 戦略を立てる(SWOT・クロスSWOT)
- 誰に何を届けるかを決める(STP)
- どうやって届けるかを設計する(4P)
- 体験の流れで最適化する(カスタマージャーニー)
この順番に沿って考えていくと、マーケティング戦略はぐっと整理されていきます。
これらのフレームワークを、自分のビジネスやサービスに少しずつ当てはめながら、実践してみてください。
「知ってる」だけで終わらせず、「使える知識」にしていくことが何より大切です。