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マーケティングの基本概念を理解する
1. マーケティングとは何か?
マーケティングとは、一言で言うと「世の中の『これ、私にぴったり!』をつくること」です。
「マーケティング=売るための活動」と考えがちですが、それは本質ではありません。本当のマーケティングとは、売り込まなくても顧客が自ら「欲しい!」と思う状態を生み出すことです。
人は、自分に合うものに出会ったとき、特に強く売り込まれなくても自然と欲しくなります。しかし、どれだけ良い商品でも「自分には関係ない」と思われてしまえば、見向きもされません。
たとえば、あなたが夏休みにビーチリゾートへ行こうと考えているとしましょう。そんなときに「絶景露天風呂10選」や「死ぬまでに登りたい山10選」といった情報を見ても、それほど興味を引かれないでしょう。
しかし、「沖縄のプライベートビーチホテル10選」や「バリの隠れ家ホテル&ビーチ特集」などの情報が目に入ったら、思わずチェックしたくなりますよね?
これがマーケティングの本質です。
マーケティングとは、商品やサービスを「誰に、どんな価値として届けるか」を設計し、「これは自分のための商品だ!」と気づいてもらうこと。これができれば、無理に宣伝しなくても注目を集め、営業をかけなくても顧客が自然に行動を起こします。
2. マーケティング戦略の流れ
マーケティング戦略を立てるには、大きく3+1のステップがあります。
「R-STP-MM」のフレームワーク
このフレームワークを用いることで、効果的なマーケティング戦略を構築できます。
ステップ0:「仮説を立てる」
マーケティング戦略を考える際には、まず仮説を立てることが重要です。範囲を決めずに闇雲に情報を調べても、何をすればいいのかわからなくなります。そこで、調査の範囲を限定するために「仮のビジネスアイデア」を立案することから始めます。
ステップ1:「R(リサーチ)」
市場環境を分析し、マーケティング戦略の方向性を定めるための情報を収集します。
- マクロ環境分析:PEST分析を使い、社会や経済、技術、政治の変化を把握。
- ミクロ環境分析:5フォース分析を用い、競争環境を詳しく調査。
- 自社分析:バリューチェーン分析とVRIO分析を行い、自社の強みと弱みを整理。
- SWOT分析:自社の強み・弱み、市場の機会・脅威を明確にする。
ステップ2:「STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)」
市場を細分化し、最適なターゲットを選び、競合と差別化するためのポジショニングを決定します。
ステップ3:「MM(マーケティングミックス)」
具体的なマーケティング施策を考えます。ここで使用するのが「4P」フレームワークです。
- Product(商品):どんな商品・サービスを提供するのか?
- Price(価格):どのような価格設定にするのか?
- Place(流通):どのチャネルで販売するのか?
- Promotion(プロモーション):どのように商品を知ってもらうか?

具体的なマーケティング戦略の構築方法
ここまででマーケティング戦略構築の大まかな流れについて理解してもらえたかと思います。 次は、具体的なマーケティング戦略の構築方法について解説します!
ここで、「R-STP-MM」の概念をもう一度見てみましょう。
「R」「STP」「MM」と横並びになっていたものを、今度は縦に並べることで、マーケティング戦略の構築プロセスをより明確に整理することができます。

このフレームワークの大まかな流れを再確認すると、
- ステップ1「R」では、マクロ環境とミクロ環境を調査し、競争優位性を整理して戦略の方向性を定めます。
- ステップ2「STP」では、市場の中でどの立ち位置を取るべきかを決定します。
- ステップ3「MM」では、4P(Product、Price、Place、Promotion)を活用し、売れる仕組みを設計します。
1. 「R(リサーチ)」で市場環境を分析し、戦略の方向性を決める
まず、戦略の第一歩は「リサーチ」です。
市場環境を分析し、自社の強みと弱みを明確にしなければなりません。このリサーチを怠ると、競争力のない戦略になりかねません。
具体的には、以下の分析を行います。
マクロ環境分析(PEST分析)
PEST分析では、社会の大きな変化を捉えます。
- P(Political)政治的要因:法改正や規制の影響
- E(Economic)経済的要因:景気や為替の変動
- S(Social)社会的要因:人口動態や価値観の変化
- T(Technological)技術的要因:技術革新やデジタル化の進展
ミクロ環境分析(5フォース分析)
ミクロ環境では、業界の競争状況を把握するために「5フォース分析」を行います。
- 競争企業の強さ
- 新規参入の脅威
- 代替品の存在
- 供給者の交渉力
- 顧客の交渉力
自社の強み・弱みを分析し、戦略の方向性を明確にする(SWOT分析)
市場環境の分析が終わったら、自社の強みと弱み、そして市場の機会と脅威を整理します。ここで活用するのがSWOT分析です。
- S(Strengths)強み:競争優位性のあるポイント
- W(Weaknesses)弱み:改善すべき課題
- O(Opportunities)機会:市場における成長のチャンス
- T(Threats)脅威:競争上のリスクや市場の変化
このSWOT分析を活用して、本質的な戦略を導き出します。ここで戦略の大枠を決定し、その方向性に沿ってSTPのステップに進みます。
2. 「STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)」で市場の立ち位置を決める
市場全体の中で、どのターゲットを狙い、どのように差別化を図るかを決定します。
- セグメンテーション(市場の分類):市場を細分化し、どの層にアプローチするかを明確にする。
- ターゲティング(ターゲットの選定):自社にとって最適なターゲット層を選ぶ。
- ポジショニング(立ち位置の決定):競合との差別化ポイントを明確にする。
ターゲット選びを誤ると、競争が激しい市場に巻き込まれてしまうため、このステップは慎重に進める必要があります。
3. 「MM(マーケティングミックス)」で具体的な施策を決める
最後に、4Pを活用して、売れる仕組みを設計します。
- Product(商品):顧客が求める価値を提供できる商品・サービスを設計する。
- Price(価格):ターゲットに適した価格戦略を決める。
- Place(流通):どの販売チャネルを使うかを決める。
- Promotion(プロモーション):どのようにして認知を広げ、購入を促すかを決める。
3. 事例紹介:「R-STP-MM」で事業を成功に導く
実際に「R-STP-MM」を活用して成功した事例を紹介します。
ある林業を営む企業が新規事業を開拓したいと考え、「コールセンターをやりたい」と相談に来ました。市場調査をしたところ、確かにコールセンター事業には需要がありました。しかし、自社の強みを分析した結果、この分野での競争優位性は見いだせませんでした。
そこで「R-STP-MM」を使い、ビジネスモデルを再検討したところ、彼らは広大な山林を所有していること、さらに息子さんがサバイバルゲームの腕前がプロ級であることが判明しました。
市場調査の結果、サバイバルゲーム市場にはビジネスチャンスがあることが分かり、**「サバイバルゲームフィールドの運営」**という新たな事業モデルが生まれました。
- R(リサーチ):市場調査を行い、競争環境を分析。
- STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング):レンタル品の充実という差別化ポイントを確立。
- MM(マーケティングミックス):商品の魅力を高め、価格設定やプロモーション戦略を決定。
結果、サバイバルゲーム事業は今でもこの会社の売上・利益の柱となっています。
4. 本シリーズの内容
本シリーズでは全7回でマーケティングの基本知識を紹介していきます。
第1回 マーケティングとは?(※本記事)
第2回 マクロ環境分析とミクロ環境分析(PEST分析と5フォース分析)
第3回 自社の強み・弱み分析(バリューチェーン分析・VRIO分析)
第4回 SWOT分析(適切な使い方を学ぶ)
第5回 STP分析(市場のどこで勝負するか決める)
第6回 マーケティングミックス(4P)(売れる仕組みを作る)
第7回 カスタマージャーニーマップの作成(顧客の購買プロセスを可視化)
まとめ
マーケティングとは、単に「売ること」ではなく、「顧客が自ら『欲しい!』と思う状態を作ること」です。
そのためには、
- 「R-STP-MM」のフレームワークを活用し、戦略的にマーケティングを設計すること。
- マクロ・ミクロ環境を分析し、ターゲットを明確にし、競争優位性を確立すること。
- 実際の事例を学びながら、戦略を実践していくこと。
これらを意識することで、より効果的なマーケティングを展開できるでしょう。
今後も具体的な事例を交えながら、マーケティングの知識をわかりやすく解説していきます!
